地獄蒸し料理に想う
河野 忠之

 地獄蒸し工房が営業を始めて3年を経過し、最も温泉地別府に相応しい施設の誕生で好評を得ている。
 蒸し釜での地獄蒸し体験と地獄釜で茹でることでの食材の美味しさは一度だけの物珍しさだけではなく、市民が、遠来の知人縁者を同行して別府らしい場所へ案内し誇らしく感じていることで度々利用をしている。出来た蒸し料理をオープンカフェの開放感のある広場で湯煙を眺めながら食べられるのも愉しい。
 今までの鉄輪の町中の施設には駐車場が無かったが、30台余りの車が駐車でき、隣接する足湯・足蒸し風呂で蒸し料理が出来るまでの待ち時間を楽しめる。
 地獄蒸しは江戸期の文献にも記載があるが、鉄輪の湯治のお客様が自炊で煮炊きに利用されていた。
 旅館のメインメニーュとしては、昭和五十年ころから「サカエ家」の女将原世津子さんが工夫をこらして始め、「サライ」などでも全国に紹介され鉄輪ならではの料理になった。 「地獄蒸し工房」で少し欲をいえば、利用者が鉄輪の中の回遊を愉しんでもらえれば最高である。別府を代表する地獄めぐり、鎌倉時代からの日本第一の蒸し湯や、日本の風景で富士山に次いで第二位になった湯けむり展望台からの眺望、夜の俳句広場からの湯けむりライトアップの虹色のゆけむり。鉄輪愛酎会が22年間に『鉄輪俳句筒・湯けむり散歩』(選者倉田紘文)で建立した25の句碑巡り。
 そして、ゆったりと宿泊し、豊かな温泉に浸ることで心と身体の最高の癒しの出来る町である。