「倉田紘文先生と〈鉄輪俳句筒湯けむり散歩〉」
押谷 隆

 鉄輪愛酎会によって、平成四年から続けられた「鉄輪俳句筒・湯けむり散歩」は、別府を訪れる観光客をはじめ、地元の俳句愛好者より俳句を募集し、日本を代表する俳人の一人である倉田紘文先生を選者としてお迎えし、全国に情報を発信するとともに、その活動は地域の発展と文化向上に大いに貢献したのである。
 選者の倉田紘文先生は、全国に約2千名の会員を擁する俳誌「蕗」を主宰され、「自然を大切にする、写生を重んずる、一人一人が皆平等」の精神に基づいて選句された。したがって選ばれた一句一句は光を放ち、格調高い作品群となっている。別府にそんな素晴らしい選者の先生が居おられたことも、快く選者を引き受けて頂いた事も幸運であるが、先生のお人柄と、先生がこよなく別府を、格別に鉄輪を愛された証しでもあろう。
 特に年間最優秀句には句碑を建立してその栄誉を顕彰し、選者の句碑を含めて二十三基にもなる。それらの句碑は鉄輪の宝であり、誇りでもある。鉄輪の地に後世まで語り継がれ、末永く人々の心に刻まれることであろう。
 平成二十六年六月に逝去されて、今は亡き倉田紘文先生、原前会長、河野会長をはじめ、鉄輪愛酎会の皆様の二十二年間の長きに亘るご努力に関係者の一員として心より感謝申し上げたいと思います。(「蕗」誌句友。第二回地獄原温泉句碑作者)