「湯けむりや 色即是空 彷徨うて」
加来浩治

 編集者から「湯けむり散歩」の最終回の原稿を頼まれた時「十七文字ならば!」という条件で引き受けた筈だったのですが、昨日の催促の電話の際、編集者はその事を一切記憶から喪失しているのか、あるいは故意にそのフリをしているのか、結果的には原稿用紙2枚分を下手くそな文字で埋めるというノルマを負う破目になってしまいました。(泣く子と編集者には勝てません!)
 十七文字の初めの「湯けむりや」の湯けむりは『湯けむり散歩』の意も込めております。
 今回、たまたま『湯けむり散歩句集下巻』の編集作業のお手伝いをちょっとだけさせて戴くことになりました。中山、坂口両先生の邪魔にならない様に頑張りたいと思って居りますが、両先生に『湯けむり散歩』が幕を降ろす事に対して、とても残念に思われている事をひしひしと知らされました。
 今回ここでこの様な迷い言お申し上げるのは不適切かも知れませんが、『湯けむり散歩』が消えてゆく理由が私には見当たらないのが(傍観者の利己主義かも知れませんが?)実感です。
   自分勝手な発想ですが、倉田先生もきっと天国で悔しい思いをしていらっしゃると思います。
   編集者にお願い申し上げます。泣く子と編集者には勝てませんが、やっぱりここで『湯けむり散歩』を投げだすのは、大変もったいないし、生意気な言い方になりますが、『湯けむり散歩』は編集者の存在のエネルギーにも値する気がします。最後のこの原稿がボツにならない事を祈って、終わります。(愛酎会会員)